OODAループという言葉をご存じでしょうか。
PDCAであれば知っている方は多いかもしれません。日本では、PDCA、PDCA、とにかくPDCAを高速で回せなどと、ビジネス界隈では誰もがPDCAという言葉を多く使ってきました。たしかにPDCAは優れた方法であり、PDCAを回すことでビジネスを常に最適解へと導くことができてきた人も多いでしょう。
しかし昨今では、そんなPDCAは旧態依然の日本的な手法だ、これからはOODAが主流、と言われるようになってきました。本当にそうなのでしょうか?
今回はそんなOODAとは何か?PDCAとの違いや使い分けはどうするか、などについて図解を用いて見ていきたいと思います。
上司さん
ねえねえ、田中くん
この前の改善計画の進捗ってどうなってる?
田中くん
すみません。ちょっと確認してみます(あれ?上司さんにチェックをお願いしていたような、、)
上司さん
もー早くしてよ?ビジネスはPTAが大事だよ?ん?PTTAだっけ?いやPPAPだったかな?
田中くん
た、たしか上司さんに分析結果と改善施策案のチェックをお願いしていたと思いましたが…
(PDCAのことかな?PPAP?ペンパ…)
上司さん
…そうだっけ?まあ早くしてよ
田中くん
……はい
OODA(ウーダ)とは
OODA(ウーダ)とは、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向性の決定)、Decide(決定)、Act (実行)の略になります。
Observe:みる・観察する
OODAは、まず相手をみる・観察するところから始めます。相手や市場の状況によりこれからの方向性を決める必要があるためです。そのためにまずは相手を観察しデータを集めることを行います。
Orient:わかる・状況判断・方向性
相手を観察し終えたら、状況判断、状況の理解を行い、方向性を決めます。今何が起こっていてどういった状況にあるのか?それら状況の中で何をするべきなのか方向性を考えます。
Decide:きめる・意思決定
状況判断と方向性について理解することができたら決定フェーズに入ります。決めた方向性に対して、何を実行するべきなのかを計画していきます。
Act:うごく・実行
最後に実行フェーズに入ります。後は、実行後に最初の観察段階に戻りこれらを繰り返します。この一連のループをOODAループといいます。
OODAとPDCAは何が具体的に違うのか?
OODAは上記説明した通りです。
PDCAは一般的にPlan(計画)→ Do(実行) → Check(評価・分析)→ Act(改善)と解釈されます。
OODAとPDCAの大きな違いは、OODAの観察、PDCAのチェック・改善の工程にあります。
OODAとPDCAは別物で、どちらが優れているというものではない
まずはじめに理解しておきたいのが、OODAとPDCAの考え方は別物であり、どちらが一番優れているというものではないということです。
これらビジネスメソッドには考え方の違いがあり、そもそも比較するものではありません。PDCAもOODAもどちらも必要なものだと思うはずです。その理由についてこれから解説していきます。
OODAはPDCAのように毎回評価・チェックして改善計画を立てるようなことはしない
PDCAではループを回す際に、毎回行った施策の評価・チェック・分析を行い、そこから新たな改善策の計画を立てる必要があります。
それに対してOODAはループを回すのに、いちいち行った施策の評価・チェックを行ったりはしません。
しかし、改善施策に対しての評価やチェックは行わなくていいのでしょうか?そこにOODAの大きな特徴があります。
流れの早い業界では、いちいち計画を立てて実行している時間はない
昨今ではITの進化・AIの台頭などにより、目まぐるしく状況が変化するようになりました。
PDCAのようにループを回す度に評価・改善計画を繰り返していると、その計画を練っているうちに市場の状況が変わってしまったり、ライバルに先にビジネス案を実行されてしまう場合があります。ビジネスでは先手を取り続けることが重要ですがPDCAでは行動するまでが遅く感じる場合があります。
田中くん
PDCAだと、サイクルを回している途中に市場の状況が変わってしまっていることがあるんですよね
上司さん
ライバルに先を越されていたり、市場が変化しているのなら、前にやった行動について、いちいち評価・改善をして計画立てる時間はないかもね
ループの起点が自己か相手かの違い
PDCAの大きな弱点は、ループの起点が内的要因・主観的なものになりがちだということです。PDCAは自分たちが行った改善に対して、自分たちで評価を行い、そこからあらたな計画を立ててから行動する必要があります。
それに対してOODAは、判断目線を外的要因・客観的なものとし、顧客や市場の状況を観察し、行動しなければならないと思った時点でループを回します。OODAは自己の行動の評価や計画に固執しません。そのためループが早くなります。
PDCAは古い日本人気質で、OODAが世界標準と言われる理由
前述した違いの通りですが、PDCAはループを回すのに毎回行動を分析してから計画を立案する必要があります。
とても丁寧に一つひとつの作業を細かく行う日本人に向いているとも言えるPDCAですが、OODAと比較するとそのループの速度は圧倒的に違うと言えます。
PDCAを回す際に、日本ではいくつもの必要のない会議を行って、何度も上司の承認を得なければそもそもPDCAを回すことができない場合が多いです。これが日本人が行動が遅いと言われる原因のひとつでもあります。
行動するのに計画は必ずしも必要ではない?
よく議論される題材でもありますが、しっかりと計画を立ててから行動したほうがいいのか、ビジネスチャンスを逃さないように、良いと思ったのならすぐ動いたほうがいいのか、これについては一概にどちらが良いかとは言えません。
しかし、マクロ視点で見ればしっかりとした計画が必要ですが、ミクロ視点でみれば毎回行動の際にPDCAを回す必要はないことに気付きます。
当然ですが、会社全体の計画や、顧客とのビジネス計画についてはPDCAが必要なのは言うまでもありません。
しかし、細かい行動についてまでいちいちPDCAを回す必要があるのでしょうか?答えはNoの場合が多いでしょう。そのあたりは現場の行動の裁量権次第とも言えます。
PDCAはマクロ視点、OODAはミクロ視点
大きな視点でみればPDCAが大切だと分かります。
しかし現場でいちいち上司の判断を仰ぐようなPDCAが良いかと言えばそうではない場合が多く、実際の行動段階ではOODAが適していることに誰もが気付くはずです。
OODAのまとめ
OODAは、現場視点のビジネスメソッドと言えます。PDCAは企業や部門全体の目線から見たビジネスメソッドと言えます。
そもそもOODAを提唱したのは、アメリカ空軍出身のジョン・ボイドという人物でした。
OODAループとして有名な意思決定理論である。これは、ボイド自身も経験した朝鮮戦争の航空戦についての洞察を基盤にして、指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものである。すなわち、監視(Observe)- 情勢判断(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)のサイクルを繰り返すことによって、健全な意思決定を実現するというものであり、理論の名称は、これらの頭文字から命名されている[8]。コリン・グレイは、OODAループについて、「あらゆる領域で適用できる一般理論」 (Grand theory) と評している
ジョン・ボイドは自身が体験した、航空戦での経験を基盤としてOODAを提唱しています。
戦争の航空戦のように、一瞬の判断が命に関わるような場合、PDCAを回す暇がないことは明白です。逆に大きな視点、たとえば国規模や軍事幹部目線で見ればPDCAを回すことが大切でもあります。
このようにOODAとPDCAは別物であり、どちらを使うべきかといった話しではありません。しかし、旧態依然の古い日本体質の企業では、現場の行う一行動でさえPDCAを回すことが強いられている場合もあります。
それらについてはOODAの考え方を採用してみては如何でしょうか。